不採用の連絡に理由が書かれていないのは、理由が存在しないからではありません。企業の中では理由が言語化されていることが多く、そのうえで開示しない運用になっています。法律がその運用を許しているためです。
理由は「ない」のではなく「開示しない」
応募者から見ると、不採用の通知は定型文だけで届きます。そのため「機械的に落とされた」「誰も見ていない」と受け取られがちです。
しかし選考の記録は、応募者ごとに評価や見送りの理由を残す形で管理されているのが一般的です。理由の欄が用意された管理表を使い、書類・面接それぞれの段階で記入していく運用が広く行われています。
つまり、求職者が受け取る「理由なし」の通知と、企業の中にある「理由あり」の記録は、別のものとして存在しています。
開示を請求する権利はある
個人情報保護法は、本人が自分の保有個人データの開示を請求できると定めています(第33条第1項)。応募時に提出した書類や、それに紐づく記録はこれに当たり得ます。
同条第2項は、請求を受けた事業者は遅滞なく開示しなければならない、と定めています。請求そのものは制度として認められています。
ただし「開示しないことができる」例外がある
同じ第33条第2項には、ただし書きがあります。開示することにより次のいずれかに該当する場合は、その全部または一部を開示しないことができる、というものです。
- 本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
- 当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
- 他の法令に違反することとなる場合
選考の評価情報は、このうち2番目に当たるものとして扱われます。個人情報保護委員会は、雇用管理情報についての質疑応答で、人事評価や選考に係る個々人の情報を「業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合に該当するとして非開示とすることが想定される」情報として挙げ、あらかじめ非開示の範囲を定めて従業者に周知しておくことが望ましい、としています。
つまり企業側から見ると、選考理由を開示しない運用は、あらかじめ想定された正規の対応です。窓口で断られるのは、担当者が意地悪をしているからではありません。
- 個人情報の保護に関する法律 第33条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057
- 個人情報保護委員会 Q9-11(雇用管理情報の非開示):https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q9-11/
企業には「開示しない」と伝える義務がある
見落とされがちですが、第33条第3項は、開示しない旨の決定をしたときは、本人に対し遅滞なくその旨を通知しなければならない、と定めています。
「回答しない」という返答自体は、返ってくる建て付けになっています。 問い合わせても永久に無視されるのが法の想定ではありません。ただし、返ってくるのは「開示しない」という結論であって、理由の中身ではありません。
それでも理由に近いものを得る方法
理由そのものの開示は期待できませんが、次の3つは現実的です。
1. 応募条件と自分の経歴を突き合わせる
求人票の必須条件を1行ずつ確認し、満たしていない項目を洗い出します。年齢・資格・経験年数のように、書き方を変えても動かない条件で外れている場合、面接対策を積んでも結果は変わりません。ここを先に切り分けると、労力の向け先が決まります。
2. 仲介が入っている経路を使う
求人媒体から直接応募した場合と違い、間に人材紹介や採用支援の担当者が入る経路では、企業から見送りの理由が共有される運用になっていることがあります。求職者本人へ全文がそのまま渡るわけではありませんが、次の応募に向けた助言という形で伝わることがあります。
3. 公正な採用選考の基準を知っておく
厚生労働省は、採用選考は応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適性・能力に基づいて行うことを基本的な考え方として示しています。本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項を選考の判断に使うことは、公正な採用選考の考え方から外れます。自分が聞かれた質問に違和感があった場合は、この基準に照らして確認できます。
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト:https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/
次の応募の前に確認すること
不採用が続いているとき、次の4点を順に確認すると、直せるところと直せないところが分かれます。
- 求人票の必須条件をすべて満たしていたか(満たしていないなら、書き方では変わらない)
- 職務経歴書に、応募先の仕事内容と同じ語で書いた経験があるか
- 応募から書類提出までに何日かかったか(複数社を並行しているほど遅れやすい)
- 仲介が入る経路と、直接応募の経路を両方使っているか
順番の決め方そのものに迷う場合は資格・スクール・転職支援を選ぶ順番を、相談先で何を聞くか決めたい場合は無料相談で確認することを先に読んでください。
まとめ
- 不採用理由は多くの場合、企業の中では言語化されている
- 開示の請求はできる(個人情報保護法第33条第1項)
- ただし選考の評価情報は非開示にできる(同条第2項第2号)。これは想定された正規の運用である
- 開示しない決定をしたことは通知される(同条第3項)
- 理由の中身を得るより、応募条件との突き合わせで「変えられる要因かどうか」を切り分けるほうが実益がある


